2章【絶望】

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カイン様はふうっと呆れに近いため息をついた。 「そうか。……君がアスラを治療したのか」 「……」 私は目を瞑ったままで頷いた。 怖くてカイン様の顔を見ることができない。 「ネリシャ」 「は、はい」 「これは立派な裏切りだよ。わかる?」 「ご、ごめんなさい……!! 本当にごめんなさい……」 謝ることしかできない。謝って許されることじゃないのは分かっているのに。 「君の失敗は今まで多目に見てあげたよね? それは君が僕のために頑張ってくれていたからだよ。でもね。流石に今回は無理だよ。見逃せない」 「……」 「……今日から君は回復の為だけに生きることになる。会議で決まったよ。君にもう人としての価値はない。当然だよね。……裏切り者なんだから」 吃驚するぐらいの低い声だった。 「そんな……!」 「分かってるの? 君のせいでジエル側の大切な兵が大勢死んだ。ネリシャ、本当に君には失望したよ。君には愛国心ってものがないんだね……」 優しかったカイン様。 そんな彼から私は愛想をつかされてしまった。 当然だ。 だって私は……。 「……っ」 もう戻れない。 私はカイン様を裏切ったんだ……。
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