1章【全ての始まり】

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カイン様も自国を大切にし、他国を虐げても栄えさせようとする様な人だ。 いわば自国が一番力を持てば戦争は起こらない。 戦争はなくなる。 ――そんな考え。 でも、ジエルが勝てば現在の戦争相手、ラディアンの民は奴隷同然に扱われることになる……。 私はジエルが占領した国家の末路を見てきた。 人として生きれず、ジエルの民に玩具のように扱われ死んでいく。 全てがそうではないが、それは酷いものだった。 勝者と敗者の関係。 敗者は虐げられようが永遠に口出しする権利はない。 何故ならば運命を決める戦いに負けたのだから。 カイン様は命をかけた戦いをお互い行ったのだから当然だと言う。 負けた者はその瞬間死んだんだ、そう思えば良い。 例え共存や慈悲等の言葉はあっても、この世界ではただの綺麗事にすぎない、勝たなければ死んだと同じだ、と……。 分からない。 果たしてそうなの? そんな世界……むなしすぎるよ。 相手方の戦導勝術士……。 この人にトドメを刺せば私の国の勝利は確実。 でも……。 私は何故だが分からないが、この人を死なせたくないと思ってしまった。 敵対している人なのに。 ましてや相手は戦導勝術士。 そんな人を助けたとバレたら私は罪人扱いだろう。 逃げればきっと裏切り者として指名手配。 そして捕まれば痛め付けられ都合良く利用され、用済みとなった最後には殺される。 ……だけどこの人は悪い人ではないと思う。
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