第1話 大悪党降臨!!正義の味方は大反転

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           2 「──なぁんて、お前はきっと何処かの誰かに知らず知らずの内にナレーションされてたりするのかもしれんね。ただ機械的にただ流れ作業のように。哀愁ならぬ悪臭漂うような深い不快なナレーションをぶっ壊れたスパコンみたいに、なぁ?伽藍伽草」  そう言って、にへらと顔を綻ばせるのは、伽藍伽草(ガラントギグサ)と呼ばれた十六歳の少女の前に、一つの机を隔てた正面に座る、小麦色の肌の──如何にも健康優良な少年、惰情情惰(ダジョウジョウダ)。  頬杖なんて付いて、無駄に似合うサングラスを掛けた少年は、明らかにその少女よりは年上であった。それは──最早少年などと形容しても良いのかと思われる程に。それは即ち、青年と形容しても特に何の問題も無い程度に。  顎に生えた無精髭、哀愁漂わせる少し汚れた袖をロールアップした学ランに、ポニーテールのように纏めあげた茶色のドレッドヘア。  ……学生。と言うには、些か違和感にまみれた容姿だった。寧ろ学生──と言うよりは、どちらかというと不良のような感じ、と捉えられても仕方が無いのではと思うかもしれない。 「……あのね、情惰。私は何度も言ってると思うんだけど──私の名前をフルネームで呼ばないで欲しいんだよなぁ……。ほら、なんか嫌じゃん。自分の名前をフルネームで呼ばれると、なんか──さあ?」  抑揚のあるのかないのか解らない、もしかすると『?』なんて疑問符は付いていないのかもしれないし、下手をすると『…』だなんて三点リーダはないのかもしれないと感じさせる口調と言葉の羅列を、そんなドレッドに向ける少女。  珍しいと確かに言える、地毛としての深い深い紫色の髪をサイドアップに束ねた、セーラー服の上に黒いカーディガンを着て、黒縁の眼鏡を掛けて、手元のプリントに目線を向けた……一言で言うならば、『虚』という印象を受ける、そんな瞳をした少女──惰情情惰と一つ机を挟んで向かい合っている少女。勿論、伽藍伽草である。  
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