第1話 大悪党降臨!!正義の味方は大反転

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  「それにだね、情惰君。私の知らない所で私の知らないナレーションが知らず知らずの内にされているだなんて、やめとくれよ。例えナレーションだろうとなんだろうと、私的にはやっぱりそんなのは陰口としか思えないんだよね。どう言い繕っても言い代えても、私の知らない陰で私の知らない事を言われてるとなると、それはやっぱり陰口な訳で──。非常に不愉快不快」  同じくプリントに目を向け、シャーペンを走らせながら言葉を平坦に、淡々と続ける伽草の口調は、全く変化無く変哲無く、非常に不愉快だと言っている割には、全く不愉快だと──いや、それ以前になんとも思っていない口振りで、ただ考えた事を……ただ口から出る言葉を、パズルのように並べ立てただけのような、そんな感じの──些か人間味に掛けるモノだが……。  当の本人、伽藍伽草は気付いておらず、咄相手の惰情情惰は気にしていない。  だから。なのだろう。話していても淡々としてしか返さない、会話していても──交わしているモノを会話なのかと疑える、自分の言葉は誰にも聞き入れられないと思わせる、壁のような彼女と、会話と呼べるモノが──少なくとも、会話擬きと呼べるだろうモノが、伽藍伽草と惰情情惰との間で成立しているのは。  成立している『ように見える』ではなく、成立しているのは。 「はぁ……ん。陰口ね、まぁ文字としては合ってるっちゃあ合ってるわな。陰の口。かははは。成る程成る程。けどよ伽藍伽草、お前は『自分の陰口程度』で不愉快だの不快になるようなヤツだったかぁ?俺としちゃあ……なんとも違和感感じてしょうがねぇんだが」  ぐぐぐ、と情惰と伽草を隔てている机──突き詰めると情惰と伽草を隔てている名も知らぬクラスメートの机──に寄りかかりながら、怠そうに句を紡ぐ情惰。  何故名も知らぬクラスメートの机を、何故名も知らない程に興味の無いクラスメートの机を、何故伽草が借りて、情惰が寄りかかっているのかは、この物語が終わる頃にはきっと誰かによって語られるだろうから、今はそれを省くとして。  そんな怠そうな情惰に比べて、手元のプリント──いや、プリントというよりルーズリーフに筆を走らせる伽草は、無表情・無感情・無機質といった所のないない三拍子であった。
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