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午前六時五十分起床。
鳴りかけた時計を止め、ふと隣を見る。
柔らかい日差しに当たりながら眠っている美少年。
大きなテディベアを抱え、至極至福の表情だ。
長い睫毛と白い肌。僅かに開いた口が、眠りの音を奏でる。
少し長めの黒い前髪の所為であまり認知されないが、紛れもない美少年だ。
《七夕、おはよう。》
《今日もいい朝だね。》
《七夕、おは──》
少し高めの優しい男の声が、テディベアから聞こえた。
「……ん?」
七夕は薄く目蓋を開け、
「り、ん……? おは……よ」
「リン」と名付けられたテディベアに、七夕は言葉を渡した。
《おはよう、七夕。》
《顔洗って歯を磨いて着替えたら、朝食食べて学校行ってらっしゃい。》
《今日も一日頑張ろうね。》
「……がんば、る」
《いい子だね、バイバイ》
「……ば、いば……い」
薄く開かれた目蓋はすぐに密封された。
「なゆー? 起きろって。リンの約束はー?」
七夕は寝返りうつ伏せ、
「……いず、み。風呂、入り……る」
「日本語オカシーぞ、七夕。……ったく」
俺は七夕を抱き上げ、
「い……、み。ちか……、ら……ち……」
「七夕が華奢なんだよ。高二男子のくせにちっせーんだよ」
「き……、く」
禁句ったって、身長百六十もないし体重だって五十ない。
ダイエット後の女子みたいだ。
「ん……」
七夕の腕が俺の首に絡み、頬をすり寄せる。
全く……。俺のなけなしの理性が崩れそうだ。
ちなみに俺、青葉泉澄はバイである。
毎日の事だが七夕の事を見ても飽きない。
白い肌に童顔、おまけに可愛いなんてホントに俺好みだ。
が、しかし、
「ほら、七夕。風呂場着いたぞー、起きろー」
「……いず、み……、ら、て……?」
いやいやいやいや何言ってんだよ七夕さん毎朝毎朝俺に髪と身体洗えとかマジ朝から何の試練だしつか本気で襲いたくなr──、ゲフンゴフン!!
いやしかしホントにさぁ……、七夕は無自覚だからなぁ……。
流石に何も色々知らない純粋潔白な男子にあれやこれやするわけにはなぁ……。
気が引けるんだよなぁ。
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