11人が本棚に入れています
本棚に追加
結局今日は学校を休んだ。
泣き終わった途端に、七夕はそのまま寝てしまった。
泣くということは結構体力を使う。
元がモヤーシな七夕坊っちゃんは疲れてしまったのだ。
只今テディベアを抱いて爆睡中だ。
このテディベア、ハイスペックなのだ。
今朝のように朝七時きっかりに目覚ましボイスが鳴る。
お昼になると昼食を促すボイス、寮に戻ったらお帰りボイス、夕飯ボイスにその他の生活ボイス、終いにゃおやすみボイス。
七夕の声に反応して、まるで会話をする。
七夕によれば、お母さんが作ったらしい。
お母さん、ねぇ……。
七夕には不可解なことが多い。
七夕がこの学校にきたのは去年の暮れ。
噂によると例に漏れることなく七夕もどっかの御曹司、しかも長男。
けど──、
「『幼・小・中、通学した記録なし』ねぇ……」
興味本位でどんなとこ通ったか調べたらコレだ。
絶対ワケアリだろ。
本人に訊いても判らないだろうしなぁ。
七夕が自分自身について判ることは、
「なゆ──、七夕なの!!」
名前と、
「あのね、生まれたの、十六回!!」
トシ
年齢と、
「七夕、リンが好きなのー!!」
「リン」という存在だけだ。
他には何も知らない。
思い出には必ず「リン」がいて、「リン」がいない思い出はなかった。
「お前、何者なんだろうね」
眠る七夕の髪を梳いて、そんなことを呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!