【Ⅰ】

6/6
前へ
/48ページ
次へ
「──……み、……き、て」 遠くから声がする。同時に揺らされる感覚。 頭と瞼が重い。 あ、俺寝ちゃったんだ。 「──起きたか、七夕?」 「うん。起きたら、泉澄、起きたなかったから、七夕──」 あー、心配されるっていいなぁ……。 何より七夕の漆黒の目が潤むってホントに──、 「七夕、ちゃんと食べる、の? だから……、七夕、一人やだの……」 ぎゅって、擦り寄る七夕が可愛くて愛しくて。 「いい子、に、……するの。だから、」 「うん、判ってる。七夕はいい子だよ。凄くいい子だよ。大丈夫だから。七夕を一人になんてしないから」 泣きじゃくる七夕を宥めるのも、案外悪くない。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加