Jet blue

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青い空が哀しいから、今日は学校に行くのをやめようと思った。 僕は自転車を、高校の建つ丘と反対の方向に向けて、軽やかに走り始めた。炎天下の通学路から逸れて木陰の濃い緑のなかへ入ると、水を浴びたように涼しかった。蝉時雨が耳に痛かった。 何しろ無断欠席なんてしたことはないので、学校には相当心配をかけるかもしれないと思ったけれど、僕の心臓は青い空が哀しいせいで粉々になってしまったからどうしようもなかった。 夏のある朝、僕は一介の高校生を止して、旅人になった。
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