宇宙同盟への道

4/5
前へ
/5ページ
次へ
「分かりました。では、チャンスを与えましょう。私はこれから、他の星の監査に向かわなければなりません。次に地球に訪れるのは、この星の時間で一年後ぐらいでしょう。それまでに、地球がどれほど、変わったのか改めて監査させていただきます」 「分かりました。一年掛けて、地球を変えてみせます」  総長はカール星人と固い約束を交わした。  カール星人が帰った後が、大忙しだった。カール星人が残したメッセージが世界中に配信された。  初めは、戦争に手を焼いていた国連が苦肉の策としてやったことだと思い、誰も真に受けようとしなかった。けれど、国連総長自らの声明と撮影しておいたカール星人の映像が流されると、それは事実であることが世界中に知らしめられた。  宇宙人などいないと威張り散らしていた学者はいつの間にか、雲隠れをし、反対にこれまで宇宙人は存在するという説を唱えてきた学者達が脚光を浴びるようになった。 「今回の件でハッキリしました。地球は文明だけでなく、精神面でも他の星にどれだけ遅れているのかが。このまま、醜い争いを続けていれば、地球は宇宙から見捨てられます」  人々は顔を見合わせ慌てた。地球の文明は今、袋小路のような状況であった。もし、宇宙同盟を結ぶことができたら、この袋小路から脱し、更なる発展を望めた。それを、精神面の幼さで棒に振るうことなるなど、あってはいけないことだった。  戦争を指揮してきた連中も慌てた。もし、宇宙同盟を結ぶことができなかったら、自分達が原因だと世界中から批難の嵐を浴びることが目に見えていた。それだったら、同盟を結ぶまでの間、たかが一年ぐらい戦争を休んでも問題はないだろう。軍事産業は一時的に不景気に陥るが、同盟を結んだ後で手に入れた他の星の技術を使って発展させればいい。挽回だって望めた。目先の利益より、今回は大きな利益を狙った方が得策であった。  学校の方でも、これまで以上に徹底した平和思想の教育を行うようになった。子供達に意味など通じなくてもいい。とにかく、表面上だけでも平和を装えればよかった。子供の方も、平和を装い仲良くすれば褒められると思い、他の人に暴力を振るうのはやめた。結果として、イジメは数日の内に撲滅された。  宇宙同盟に加入を。それを、合い言葉に人々は手を取り合い、宇宙に認められる社会を目指した。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加