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シンシン降る雪。見渡す限りの銀世界。
山も、木も、社も、雪化粧を施(ほどこ)していて、夜空に浮かんだ満月がぼんやりと辺りを照らしている。
幻想的な世界からくり抜かれたような神社の一角で、
外套(がいとう)をまとった娘と平安貴族のような衣冠姿の美しい男が、
なんともいえない悲しげな顔で見つめ合って胸の前で指を絡ませていた。
「行け、お前は幸せになるのだろう?」
娘は泣きながら首を振った。
「あなた様のいない世に幸せなどございません」
「たとえ見えなくなろうとも傍にいるさ」
「それでも、…いや」
娘はすすり泣く。
「困ったやつだ」
男は小さく笑って、繋いだ手を強く引きよせた。
娘の体は男の腕の中に収まる。
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