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「はぁ…」
放課後、修ちゃんから連絡がきて20分。
『すぐ行くから!』
と言われ、修ちゃんの学校の校門の前で座り込んで待っているのだが、全く来る気配が無い。
夕暮れの蒸し暑さに少し腹が立つ。
襟足はすでに汗で濡れ始めていた。
「あっつ……」
さっきから何度も言っている言葉をまた口にする。
「暑い」と言って涼しくなるわけでもないのに。
ジリジリとフライパンのように熱いコンクリートは、汗が零れると、「じゅっ」という音を立てて蒸発する。
「…30分経ったら帰るか…」
そう決めた矢先だ。
「凛ー!ほんまごめんなぁ!!先輩に捕まってもうて…」
バタバタと修ちゃんが、額に汗を浮かべてやって来た。
「ううん、大丈夫。」
明るい口調でそう答えると、修ちゃんはふにゃりと微笑んで「ありがとぉ」と俺に言った。
修ちゃんの黒髪が夏の生温かい風で揺れる。
つり目で大きな瞳は真っ直ぐ俺を捉えている。
「じゃあ、帰ろっか。」
俺の手を掴んで引っ張り上げた修ちゃんはまた優しくそう言い放った。
修ちゃんは優しい。
けど強い。
大切な人が傷付けられると歯止めが効かなくなる。
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