雷の章~はじまり~

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「いってぇえええ!!!」 大柄な男は僕の雷玉を握りつぶしたあとドヤ顔をしていたが、意外とダメージが通ったみたいで叫んでいた。 「お前、こんなちっちぇ雷玉にどんだけ魔力込めたんだよ!!」 男は手をブンブンと振りながらこっちに近付いてきた。 一連の流れを黙って見ていた僕は、その男が近付いてくるのを止めた。 「今ここにワームが居るんで下がってください! 危ないですよ!!」 すると、男は目を丸くしてから、鼻を鳴らした。 「ふん、ワーム如きで危ないって何言ってんだ こいつは虫が苦手なだけだ お前、そんな魔力使えるのに相手の力量も分かんねぇのか?」 こいつ、と言いながら後ろに居る少女に親指を向け 僕にそう言い放った。 (確かに…この世界に来たばっかりだし、相手の力量を見極めたり、そんな技術持ってないけど なんかそんな言い方されるの癪だな…) むぅ、と顔を強ばらせながら、僕はワームとの戦いに戻ろうとする。 「おい、どこ見てんだ ワームはお前の足元だぞ?」 男にそう言われ僕は咄嗟に真上へと跳躍した。 すると僕の真下からギザギザの歯を生やした芋虫が大口を開けて飛び出してきていた。 ギリギリのところで噛まれず、しかし重力には逆らえずワームの所へと一直線に落ちていく僕。 そんな僕を見兼ねたのか、男はいつの間にかワームのすぐ横に居て、ワームの腹に拳を打ち付けた。 ドゴッっと鈍い音を立てワームは吹っ飛んでいき、木にぶつかったと同時に絶命した。 僕は地面に着地し、男を見た。 「あの…すみません…ありがとうございます…」 「お前、素は良いのに、なんか戦い慣れてねぇっつうか残念な感じだな しかもこの辺りでは見たことのないやつだ お前、こんな所で何してる」 僕をじっと見つめ男はそう言った。 「戦い慣れてないっていうか…戦ったことないんですよね… それにこのあたりで見た事ないのも当たり前です 僕世界樹の上空から落ちてきたんで…」 僕の発言に男は目を丸くしていた。 「戦ったことない?!お前、中等部位の子だよな?! 任務実習とか、模擬戦闘した事ねぇのか?! それにお前世界樹の上空からって……何者だお前」 最後にボソッと言い、男は腰に差していた質素な剣を向けてきた。
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