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木は焼け焦げ、水は干上がり生命のかけらも感じさせない大地。
そんな灼熱の焦土とも言える場所に立つ黒髪の青年。
青年の足元には人であったであろう今は物言わぬ存在が幾重にも折り重なるように山となっている。
地獄と表現するのならばこの場所を言うのだろうといえるほどの惨状だ。
青年は足元に転がっている死体の瞼を閉じる、青年の表情は悲しんでいるようで怒っているようで、眼からは涙が落ちる。
青年はそれを手でとると不思議そうな顔をして涙を指から払う。
そしてそれを見つめる老人。
「…お主はいったい何者じゃ」
目の前で息も絶え絶えの老人が青年に問う。
「何者か、何なんだろうな、神ともいえるあんたなら知っているだろう人にはそれぞれ役割がある、俺はそれにしたがって動く…」
青年は手に持つ剣に反射した自分の姿を見ながらも自分が誰で何者なのかを考える。
剣に移るのは黒髪で眠たそうな眼つきをした自分の顔。
自分のことは一切わからないがしなくてはいけない事だけが脳裏に浮ぶ。
青年をにらみつける老人、老人の目には意思が宿っておりこの惨状でもまだ折れないその心。
しばらたにらみ合いが続いたが老人は口を開く。
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