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ぐいぐいとあたしを引っ張り廊下を進む先生にあたしは必死に反論する。
「先生これには込み入った事情が…。そーゆー場合は仕方ないですよね!!」
「込み入った事情って?」
「えーと……」
放課後教室で寝てたら誰も起こしてくれなくて気づいたら辺り真っ暗…
なんて言えない!!!
「ま、先生暇だから職員室でゆっくり聞こうか」
「そんなーー!」
結局連行されるあたし。
新学期早々反省文と一週間校門の掃除か……。
ついてないなあ…。
諦めかけたその時、救世主は現れた。
「あ、こんなところにいたのか楓君」
「へ…?」
聞きなれない声に顔を上げると、そこにはなんとなく見覚えのある、優しく微笑む背の高い男子生徒がいた。
もしかして…新生徒会長の…
…壱月 怜央…!?
同じ学年ではあるがクラスが違うため話したことなんて一度もない。
まして、あたしが彼を知っているのは彼が生徒会長に立候補して全校の前で演説を行ったからだ。
…つまり、彼があたしを知っていることなんて有り得ない。
なのに……なんであたしの名前…!?
訳が分からずぽかんとしていると、会長はあたしに近づいてきた。
「全く…急に居なくなるから探したじゃないか」
「は…?」
何…言ってんのこの人?
え…話見えないんだけど…。
「まだ明日の対面式の準備が終わってないんだ。早く手伝ってくれ」
「え…!?」
会長はあたしの腕を掴むとぐいっと自分の方へ引き寄せた。
対面式?準備?
何の話!?
「あれ、楓は生徒会役員だったか?」
すかさずつっこむ中山先生に生徒会長は爽やかな笑顔でこう言った。
「実は今人手が足りなくて、ボランティアで楓君に手伝ってもらってたんですよ。ね?」
……何が「ね?」!?
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