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私はテレビを消し、食器を洗いながら物想いに耽っていた。
私が三歳の時、
父母と一緒に姿を消したとしたら、
私は幸せだっただろうか。
私は祖父母がきちんと面倒を看てくれていたお陰で
淋しいと思うことはなかった。
だが私に悪意を持つ同級生から悪口を言われた時は酷く傷つき、何も言い返せなかった。
「留奈(るな)は両親がいないから分からないんだよ」
あの時、自分の事の様に本気で怒って喧嘩した男の子がいたっけ。
あの子、どうしてるかな?
私の初恋だった。
でも彼は小六の時、皆にお別れも言わずにどこかに引っ越していった。
彼に関する悪い噂は後を絶たなかったが、
私は彼とはどこかでまた会える気がしていたし、
何より彼を信じていた。
彼ならきっとどこに行っても大丈夫だと。
一通りの家事を済ませた私はリボンの付いたティーシャツを着、
青いジーンズ生地の短パンと黒のニーハイと赤いスニーカーを履き、
玄関から飛び出していった。
桜並木の道を走り抜け、暖色のレンガ造りの校舎に入ると、
友達二人とばったり会った。
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