32人が本棚に入れています
本棚に追加
三人は慌てて大教室の扉を開けると、
空いていた前から二番目の席に陣取り、
筆記用具を出し始めた。
三人の用意が終わる頃、先生が教壇の前に現れ、テストを配っていく。
テストが皆に行き渡った後は、シャープペンシルと消しゴムの音しか聞こえなかった。
試験終了後、真っ青な顔をしたユリアと琴音を励ますために
留奈は二人を連れ、正門横の小路を抜けて喫茶店に向かった。
白兎の描かれた青い扉を開け、
赤と白のチェックのクロスが掛けられたテーブルに着くと、留奈は注文した。
暫くして出てきた料理を見て、
ユリアと琴音は感嘆する。
白い皿に盛られた料理は不思議の国のアリスの世界を繊細に表現していた。
トランプの兵隊、女王、白兎、赤薔薇、白薔薇・・・
全てがストーリーの順を追う様に皿の左端から綺麗に盛りつけられている。
琴音はアリスの落ちた穴を模したチョコレートプディングを一口口に入れると、思わず笑顔になる。
ユリアもはしゃいで赤カブと白カブで出来た薔薇のサラダに口をつける。
「留奈ってさ、こういう可愛いお店見つけるの上手いよね!」
琴音の発言にユリアも大きく頷きながら青い瞳を輝かせて笑う。
「本当!
日本でもこんなお店に行けるなんて思ってなかった!」
「ヨーロッパの方がこんなお店多いでしょ!?」
ユリアは首を横に振る。
「いや、日本だけだよ。
ここまで綺麗に料理を飾れる国って!」
その後、留奈は二人と一緒に夕方までカラオケやショッピングを楽しんで帰宅した。
玄関を閉めると、留奈は何とも言えない淋しさに襲われる。
・・・これからまた一人の時間をこの家で過ごすのか。
何の変化もない単調な日々を―
最初のコメントを投稿しよう!