動き出す

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「あいちゃん」と呼ばれた彼は、話しかけて来る友人達を無視するでも積極的に話しかけるでもなく、自然な適度さで接している。 そのうち他の席に座っていた女の子達も混じり、わいわいと談笑し始める。 私はその様子をさりげなく眺めていた。 彼の名前は石間 藍(いしま あい)。 私と同じ学科で一つ上の先輩。 私自身彼と話した経験はないが、石間先輩の所属している陸上サークルを通して入学当初から噂で名前ぐらいは知っていた。 並外れた運動神経で、それまでほとんど名前の知られていなかった陸上サークルを彼が有名にしたとすら言われている。 黒髪にシンプルなシャツを着て周りより少し大人びた顔立ちをしている。 その上本を読んでいる姿はまさに文学青年だ。
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