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ゆっくりと立ち上がった女は、意外にも165cmほどある。
手足はほっそりと長く、胸や腰も必要以上に強調されていないバランスの取れた身体つきだ。
濃い赤のイブニングドレス。正確にいうと、裾へ行くに従って深みを増す。ほとんど黒に近づく裾にかけて、細かな金粉が擦り込まれている。
胸元にはドレープが取られているが胴体は細く絞られ、大胆にも60cmはありそうなスリットが左腿の脇から足首まで入っているが、後ろの裾は地についている。
惜しむらくは薄い金のショールを纏い、隠された背中である。絶妙な線を描くのがわかるだけに、何とももどかしい。
再び女が口を開く。
「助けてもらった上に、すまないけど、ここはどこなのか教えて欲しい。ー…黒き王よ」
男の片眉が跳ね上がった。
「タイニアス系の第3惑星、テラノアだ。サンセリア大陸の…まぁ田舎の方ってとこだな」
女は眉を寄せた。
「タイニアス?…テラノア?」
男はそれこそ、驚いた。
タイニアス系第3惑星、テラノア。
今や押しも押されもせぬ、宇宙の中央である。
男はそっと尋ねた。
「…おい。まさかと思うが、知らないのか?」
女は周囲を見回し、ため息をついた。
「知らない。少なくとも私の知る宇宙とは違うようね。…月が、2つ出ているわ」
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