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男は思わず女を見た。所が違えば、見え方は違う。
もちろん、月が2つある惑星がないわけではない。そんなことは、今や5つの子どもでも知っている。
女は苦笑した。
「言い方が悪かったわ。少なくともさっきまで私のいた場所とは、根本的に違う。あなたのように自在に姿を変えられる者は、いない」
男はとたんに鋭さの増した目で、女を見た。
「どういう意味だ?」
女は淡々と答えた。
「そのままよ、黒き王。他の個体に混じっても、私には見分ける自信がある…といっても黒い獅子がそんなにほいほい闊歩していても困るけど」
男は呆気に取られた。
今まで人間の姿でいる時に、別の姿を看破されたことはない。
というより、あらゆる生命体が混じっている今、相手がオレンジ色の皮膚であろうが、緑の髪であろうが、誰も気にしないのである。
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