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綺麗な瞳だ。
男は素直に思った。
自分の姿がどういう影響を人に(主に男性に)与えるか、知らない訳ではないだろうに、少しの媚も含まれていない。
「奇遇ね」
「…?」
「私も同じことを思った。私の顔を見て、騒がなかったのは初めてよ」(違う意味で)と、心の中で付け足す。
「おい、それはないぜ?湧いて出たときゃびっくりしたが。だからと言ってこんな別嬪をこんなとこに放り出して逃げちゃ、男が廃るだろ」
「…それ、本気で言ってるの?」
「はぁ?おまえ、鏡はみたことないのかよ?」
「あるわ。…自分の顔ぐらい」
「じゃあ、どこの、どいつが、おまえを美人でないと言った?」
そう訊かれて女は真剣に考え込んだ。
「いない、かもしれない。でも、面と向かって褒められた経験もない。ということは、普通ではないの?」
男は天を仰いだ。
「冗談じゃねぇよ。おまえみたいな迫力美人、声すらかけられなかったんだろうよ」
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