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「行こう」
そういって車に乗り込む。
車を運転する横で、私はアルバムを開いた。
そこには、私達が産まれてから引っ越すまでの写真が入っていた。
引っ越した先で、私は幼い頃の写真も父親の写真も見る事はなく微かに残る父親の面影を追っていた。
アルバムには、若かかりし頃の母親と母親が私達を抱いて笑っている。幸せそうな表情を浮かべて私に暖かな視線を向ける。
お兄ちゃんが隣でその写真を横から覗く。
「おまえもこんな可愛い時期があったんだな」
「今は、可愛くないって事?」
そういって怒ってみせるとお兄ちゃんは笑って私を見つめる。
「まぁおまえはさ、あの頃の俺達には天使みたいだったからさ」
「ふーん」
「なんていうかおまえが笑うと皆が幸せになれた」
「お母さんも?お父さんも?」
「うん」
「お父さんはどんな人だったの?」
私は、今まで触れた事のない話題に触れた。
「父さんはさ…」
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