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そう促されて私は兄とその場を立った。
兄の車で訪れた場所は、昔私達が暮らしていた場所だ。
母親が亡くなってから手放して今は他の人が住んでる筈だ。
「懐かしいな」
「うん。懐かしいね」
ここでの暮らしが蘇る。
父親がいたあの頃、母親と兄で過ごしたあの時。
幸せがそこにはあった。
父親がいなくても3人で強く生きてきたんだ。
「とうとう、嫁に行くんだな」
「何よ今更」
「なんかな」
そういった兄の横顔が少し寂しげにうつる。
夕焼け色の空が兄の横顔を照らす。
「そういえばここの河原でよく遊んだよね」
「あぁ」
いつもと様子の違う兄。
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