第一章 新たな力

2/38
前へ
/286ページ
次へ
             壱    立頭大学付属高校の図書室。  高校の図書室にしては、あまりに巨大でその蔵書の数は、国立図書館並みと噂される。  それだけの規模の図書室だけに、司書として一名の教師が常駐しているのだ。  大久保 紗理奈。  独身で彼氏のいない紗理奈は、ここのところ恋をしていた。  それが、この学校の生徒。その為に、禁断の恋だと妄想に入り込んで、その生徒に何かしらのアクションを起こせないでいた。  三年生の折原 洋輔。  一見すると、背が高いだけでつかみ所の無い、普通の高校生にしか見えない彼。  事実、つい最近まで紗理奈も、彼を劣等生のような目で見ていたフシがある。いや、存在こそ認識していたものの、彼の顔すら知らなかった。  図書室のヌシ。  そう呼ばれていた訳では無い。だが、洋輔は時間を問わずに図書室を訪れては、他の生徒が近寄らない美術書のコーナーへ行く。  書棚の隙間に設置された椅子に座り居眠り。  洋輔は、そんな生徒なのである。 「それが、違ったのよね……」
/286ページ

最初のコメントを投稿しよう!

452人が本棚に入れています
本棚に追加