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壱
立頭大学付属高校の図書室。
高校の図書室にしては、あまりに巨大でその蔵書の数は、国立図書館並みと噂される。
それだけの規模の図書室だけに、司書として一名の教師が常駐しているのだ。
大久保 紗理奈。
独身で彼氏のいない紗理奈は、ここのところ恋をしていた。
それが、この学校の生徒。その為に、禁断の恋だと妄想に入り込んで、その生徒に何かしらのアクションを起こせないでいた。
三年生の折原 洋輔。
一見すると、背が高いだけでつかみ所の無い、普通の高校生にしか見えない彼。
事実、つい最近まで紗理奈も、彼を劣等生のような目で見ていたフシがある。いや、存在こそ認識していたものの、彼の顔すら知らなかった。
図書室のヌシ。
そう呼ばれていた訳では無い。だが、洋輔は時間を問わずに図書室を訪れては、他の生徒が近寄らない美術書のコーナーへ行く。
書棚の隙間に設置された椅子に座り居眠り。
洋輔は、そんな生徒なのである。
「それが、違ったのよね……」
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