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大入道は、振り向かず答えた。
天守閣に鎮座する、絢爛豪華な社に封じられた大妖相手では、どこを向いていても同じだと言いたいようだ。
更に、大入道は続ける。
「惹かれはしないが、恐ろしいものを作り上げたとは思いますな」
『作り上げた? それは、違うな』
「何です?」
『我が城も、その城下町も、未だ完成をしておらん。全てが完成したならば、我は忌まわしき折原の結界から解き放たれ、妖界と人間界の支配に乗り出すであろう』
言葉と共に放たれる、どす黒い妖気。
大入道はそれを背中で受け、吐き気にも似た嫌悪感に包まれる。
大入道は、大妖に支配されていない。
大妖の妖気の塊をその身に受け入れた妖は、悪の妖気に支配されてしまう。
だが、ここのところ支配され無い妖が出現している。
雪女が、そうであった。
妖気の塊を受け入れ、妖としての能力を飛躍的に向上させた。それでも、大妖の命令を聞き入れず自らの意思で行動する。
だが、その身は呪われてしまうのだ。
そう、大妖の妖気に。
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