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しばらくの沈黙の後、大妖が口を開いた。
『純粋に、それだけか?』
「えぇ、以前にも話しましたが、あやつは中々のくせ者。無手で仕合ってみて、どれ程までの強さか知りたいのです」
『ふんっ、食えん奴だ』
大妖は、それ以上の追求を止める。
それは、大妖にも同じような気持ちがあり、洋輔の成長を楽しみにしているから。大入道の言うように、武器を持たない洋輔の強さに興味を引かれた。
折原 洋輔の無手。
これまで洋輔は、武器を持たずに戦った事は無い。
『まぁ、良い。好きにするがいい』
「えぇ、そうさせてもらいますよ」
大入道は、ふてぶてしく言うと、天守閣を後にして城下町に降りた。
不死城がある側の岩山の麓近く、白木の香り漂う新築の寺へと入っていく。
そこが、大入道に割り当てられた住まいだ。
「ふん、何度見ても下品な寺だな」
大妖に話すのとは違い、大入道の口調が荒く強くなっている。それが、大入道の本来の口調とは思えない。
それはただ、寺の作りが気に入らないだけなのであろう。
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