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そして、本堂に座した。
本尊には、人間界の寺のような仏像では無く、大妖を思わせる彫像が鎮座している。
「これが、大妖?」
大入道は、初めてこの本尊に立ち入った時、そのように溢していた。
それが、本堂に大妖の姿か。
これまで見た事が無い妖が、堂々と鎮座している。
鬼のようでもあり。
獣のようでもあり。
巨人のようであり。
人のようでもある。
威厳があり、堂々とした姿には大妖を思わせなくも無い。だが、それを大妖と見ても良いか迷うところだ。
これを作成した妖も、大妖の姿を知らず想像で作成したのだろう。
「大妖とは、何者だ?」
大入道も、それを知らない。
現在の妖界において、その姿を明確に知る者はいないだろう。
それでも従う妖がいるのは、その強大な妖気があるからである。
「このまま妖界を、奴に渡す訳にはいかん……」
大入道は、小さく呟く。
そして、本尊に背を向け座禅を組むと、ゆったりと大きなひとつ目を閉じた。
そして、洋輔を思う。
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