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その瞬間、大入道の腹の奥からどす黒い妖気が沸き上がってくる。
それは、牛頭と馬頭から託された大妖の妖気の塊を取り込んだ。それが、今となって燻り出してきた。
気を抜くと、妖気が全身を駆け巡りそうだ。
「流石に、大妖の妖気か……」
大入道は、体の大きさを倍程度まで膨らませ、気合いを込めて大きく息を吐いた。
それは、武術家の呼吸法。
呼吸法で大妖の妖気を押さえ込むというよりは、自身の気の流れを整えているようだ。
やがて、妖気のざわめきが治まった。
「ふぅ、厄介なものを取り込んでしまったか。だが、我には力が必要だ……」
大入道は、立ち上がる。
体の奥底に押さえ込んでいても、大妖の妖気は溢れんばかりの力を大入道の全身に巡らせた。
改めて呼吸を整え、大きなひとつ目を閉じる。
「こおぉぉぉぉぉ」
人間界における空手のような構えを取ると、右手を正面に突き出した。
拳が、空気を切り裂く。
そして突き出された拳から遅れ、風圧と共に衝撃波が本堂の壁を叩いた。
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