序章

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   そして、古い市役所庁舎からは想像も出来ない、近代的なフロアに歩み出す。  二十を越えるモニター。  最新のパソコンが組み込まれたコンソールパネル。  職員が装着している、高性能のインカム。  警察の基本装備より強力な重火器。  警視庁の分室と言うよりは、地球防衛軍の地下基地のような様相である。 「あぁ、源治さん。お疲れさまです」 「お疲れさん。それで、街の様子はどうだい?」 「今のところ、これと言った騒動は起きていません」 「そりゃ、何よりだ」  源治は、一通りモニターに視線を送ってから、声をかけた職員の隣に腰かけた。  だからと言って、何をする訳でも無い。  ただ、その傍らには数日前に発生した、駅近くの小学校周辺の騒動。天狗面の男たちによる事件の報告書が、責任者の印鑑待ちで置かれている。  源治は、それにも視線を送った。  十にも及ぶ捺印欄の最後の欄には、警視総監の役職名が鎮座している。  もはや、国家機密レベルの話しのようだ。  だが、源治は驚かない。
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