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捺印欄には名前こそ無いものの、この機密事項の全てを理解しているのだ。
いや、源治の存在自体が、機密事項の最重要項目と言えるのだろう。
折原一族。
遥か悠久の昔から、妖怪を退治する事を生業とし、その術を子々孫々に伝えてきた。
だが、その名が歴史の表舞台に出た事は無く、妖怪の存在以上に隠されてきたのだ。
それは、現代においても同じである。
妖怪の存在が、人々の中から伝説のようになった現在であっても、形を変え今に受け継がれている。
源治の孫、折原 洋輔に。
それは、一子相伝の伝承と言うよりは、成り行きで継承されたようなもの。だが、源治は洋輔の才能を見抜き現役を退いた。
まだ、始まったばかり。
それでも洋輔は、源治の望む以上に妖怪退治の責務を果たし、人間界のみならず妖界の戦いにも立ち向かっている。
折原一族と、大妖の因縁でさえ断ち切るのでは無いかと、源治は密かに期待する程であった。
「源治さん。そろそろ、洋輔くんに真意を話しても良いかと」
「いや、まだまだ」
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