序章

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   源治は、職員に申し訳なさそうに頭を下げた。  確かに彼の言う通り、洋輔に話す段階に来ているのかもしれない。だが自身で語ったように、洋輔の成長の幅を考えると、まだその時では無いと思えてしまう。  折原一族と大妖との因縁を終わらせる男。  源治は、洋輔の中にその可能性を見いだし、それに賭けてみるつもりなのだ。大妖さえ存在しなくなれば、人間界の妖怪達が悪事を働く事は少なくなる。  いや、無くなるかもしれないのだ。  人間と妖怪の共存。  それは太古の昔には、当たり前の事として成り立っていた筈なのだ。  源治は、それを望む。  洋輔も、同じく望んでいるだろう。  だからこそ源治は、洋輔を千尋の谷に落とす獅子ように、彼の後ろ楯を隠し続けるのだ。 「我々の行動は、秘密のまま終わった方が良いのかもしれませんね」 「あぁ、この施設に市民や町民が避難する事なく、洋輔が大妖を打ち倒すのが理想だろう」  源治の語った事。  この施設は、シェルターでもあった。当然だが、災害時の避難所になるのだ。
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