序章

7/8
前へ
/286ページ
次へ
   ただ、災害目的の為に作られたシェルターでは無い。  妖界と人間界。  二つの世界は、まったくの別物でありながら、物理的に接する場所があるのだ。  それが、神楽市狛井町なのである。  接しているとは言っても、人間も妖怪も自らの意思で行き来する事は出来ない。  一部の特殊な能力を持った人間や妖怪が、それを可能にしている。だが、それにも幾つかの条件があるのだ。  だが、二つの世界を隔てるものが取り去られたとしたら、大妖の妖気により凶暴化した妖怪が人間界になだれ込んでくる。  その為のシェルターなのだ。 「それとて、一時的な避難にしかならん」 「えぇ、それにこの施設に収容できるのは、神楽市民程度ですからね」 「あぁ、妖怪が放たれれば周辺の市町村は、たちまち滅ぼされてしまうだろうな」  源治は、百鬼夜行を思い浮かべた。  空を覆い尽くす程の妖怪が放たれたとすれば、日本が滅ぼされるのも数日程度であろう。  自衛隊の武器でも、対抗し得ないと見られている。  大妖が支配する人間界。
/286ページ

最初のコメントを投稿しよう!

452人が本棚に入れています
本棚に追加