第1話

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彼とこうして会うのは何年ぶりだろう。 初めて彼を目にしたのは 高校2年の春。 7年の歳月をも感じさせない空気が 2人を包んでいた。 夜。 岸壁。 懐かしい曲。 あの頃と全く変わらない彼を横に、 ドキドキする事もなく ただただ思い出話に花が咲いた。 それぞれの時間がそれぞれに進んでいたはずなのに 隣に居るのが当たり前のような 安心しているような気になるのは 彼も同じだったようで、 「何、この感じ。」 「不思議だよな、これ。」 なんて笑いながら言った。 少し離れた場所にある灯台から灯りが洩れる。 彼に出会うのはいつも こう暑い時期。 車の窓を少し開けて 昔と変わらない銘柄のタバコに火をつけた。
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