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あんな事を言ったけど、
本当は気になる人がいた。
その人には会ったこともなくて。
話した事すらなくて。
厳密に言うと、見たことはある。
しかもテレビの中で。
今年の春だった。
知り合いの先輩から久しぶりにメールが届いたのだ。
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受信:カズ先輩
件名:元気にしてるか?
本文:花園行くことになったんだよ。
部のインタビューが今日放送だから
絶対観ろよ。
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先輩は2つ離れた町の、ラグビーで有名な高校の3年生。
先輩と言っても、椿の直属の先輩ではない。
高校に入って初めての彼氏の先輩だった。
その彼もラグビー部だったもんだから
テレビを観るか少しだけ悩んだけれど。
付き合っているときも、色々と相談に乗ってくれてはいたが
彼と別れてからも、元気付けのメールをくれたりして
大事なお兄ちゃん的な存在になっていた。
放送時間までに家に帰ればいいか。
そんな事を考えながら、
授業を終えて、美夏と街へ出る。
帰り際に
美夏にもテレビを観るように伝えた。
「ラグビーって男臭そうで…いいよね!」
そう言いながら美夏はバスへ乗り込んだ。
楽しいことを見つけるとはしゃぐ美夏。
明らかにそのテンションで、窓から手を振っている。
なんだかこっちまで楽しくなって
笑いながら美夏を見送った。
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