第1話

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あんな事を言ったけど、 本当は気になる人がいた。 その人には会ったこともなくて。 話した事すらなくて。 厳密に言うと、見たことはある。 しかもテレビの中で。 今年の春だった。 知り合いの先輩から久しぶりにメールが届いたのだ。 ーーーーーーーーーー 受信:カズ先輩 件名:元気にしてるか? 本文:花園行くことになったんだよ。   部のインタビューが今日放送だから   絶対観ろよ。 ーーーーーーーーーー 先輩は2つ離れた町の、ラグビーで有名な高校の3年生。 先輩と言っても、椿の直属の先輩ではない。 高校に入って初めての彼氏の先輩だった。 その彼もラグビー部だったもんだから テレビを観るか少しだけ悩んだけれど。 付き合っているときも、色々と相談に乗ってくれてはいたが 彼と別れてからも、元気付けのメールをくれたりして 大事なお兄ちゃん的な存在になっていた。 放送時間までに家に帰ればいいか。 そんな事を考えながら、 授業を終えて、美夏と街へ出る。 帰り際に 美夏にもテレビを観るように伝えた。 「ラグビーって男臭そうで…いいよね!」 そう言いながら美夏はバスへ乗り込んだ。 楽しいことを見つけるとはしゃぐ美夏。 明らかにそのテンションで、窓から手を振っている。 なんだかこっちまで楽しくなって 笑いながら美夏を見送った。
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