20 開戦

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若い男は、入口付近で人間観察をするかの様にただジッと静観している… まだ…誰一人この男の存在に気づいていない… 只今交戦中 2時35分 龍谷は、デスクに手を掛けムクっと起き上がり顎を触れながらハサウェイを見据えた。 渾身のハイキックが直撃した筈なのにノーダメージ!? ハサウェイは、驚きの表情を浮かべた… ハサウェイの繰り出したキックの速度、角度、威力!全てが完璧だった筈… 鍛練の賜物で身につけたド素人とは違う、格闘家のような鮮やかで、綺麗に繰り出された上段蹴り!通常の人間なら意識が消し飛ぶ程の衝撃なのに、龍谷は何食わぬ顔面持ちと平然さでデスクを挟みハサウェイの眼前で立ち上がった。 その場にいる全ての者が注目する中、ハサウェイ同様江藤、純や、葛藤、よしたかは龍谷の再起に…ノーダメージな様子に絶句した。 エレナも茫然とその光景を目撃… ほんのわずかにエレナが目を反らした瞬間! 股間へ押し当ててる拳銃からほんのわずかにエレナの力が抜けた瞬間! 健太は、素早く体を反転させエレナの喉元に果物ナイフを突き据えた。 エレナの喉に冷たく血の臭いが染みつく刃が触れ、エレナは自分に突き付けられるナイフを直視!それから健太に視線を向ける… そして、健太はエレナに刃物を向けると同時に懐から素早く拳銃を取り出し、それを由美へ向けた。 微かに硝煙の臭いがする銃口に狙われた由美は、強張った表情を見せ身体が硬直する。 キラーも健太に続きその一瞬の隙を見逃さなかった…懐に忍ばせていた拳銃を素早く取り出すと葛藤の額へ銃口を向けた。 親指で撃鉄が押され、リボルバーの弾倉が回転する… それを見た純やは、とっさにキラーへ弓の狙いを定め、江藤は、腹部を抑え悶えるデスの背後へ回ると羽交い締めにしてナイフを突き付けた。 純やはキラーへ「やめろよ!もし…それを弾いたら、おまえを射る!」 江藤は健太へ「おまえもその女性を撃ったらこいつの喉をかっ切るよ!」 それぞれがそれぞれに銃やナイフを突きつけ合い一瞬にして一触即発の緊迫感が覆った… 互いの動きが静止され牽制され抑制される。 ハサウェイと龍谷の無言の睨み合いが続き 30秒間ぐらいだろう…各相対の間に短く長い沈黙が流れると…
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