笑顔のせい

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   今日は、何でここに来たんだろう?  あたしが黙って背中を見つめていると、彼は振り返った。 「? 何?」  青柳大輔はそのままあたしの隣に立つと、手を伸ばして引き戸を閉める。 「何で閉めるの?」 「何か話したそうな顔、してるから」  え、と自分の頬を両手で覆うと、青柳大輔はプッと吹き出して笑った。 「嘘。オレが話したいの」  そうして、青柳大輔は準備室の奥まで行くと、使われていない机の上に腰を下ろす。  あたしがそのままジッと見つめていると、彼はふぅと溜め息をついた。 「なぁ、この間の覚えてる? 英雄とオレが話してた時の……」  青柳大輔のくちびるが英雄、と動いた瞬間、何のことだかは判ったんだけど。  何故か沸き上がった反抗心が、無関心を装え、とあたしに囁いた。 .
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