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青柳大輔は一瞬あたしをジッと見つめ、その視線が柔らかく解けた。
そんなふうに、しかも男の子に見つめられたのは初めてで、この間の彼の告白が夢や幻なんかじゃないってことをものすごくリアルに感じて、いたたまれない。
やがて周りに気付かれる前に、青柳大輔は手の甲で額の汗を拭うと、またボールを追いかけて走り出した。
汗が欝陶しいのか、前髪をかき上げながら走る彼の姿を見て、暴れる心臓に煽られるように、胸がキュンと鳴く。
修学旅行で、彼にどんなふうに伝えたらいいだろう。
そうやって立ち尽くしていると、後ろから肩をポンと叩かれて、驚いた。
「まだいたの?」
振り返ると、古澤さんが立っていた。
「忘れ物しちゃって。そしたら昇降口から赤城さんが見えたから。どうしたの?」
「う、ううん。何でもない」
青柳大輔を見てた、なんて言える程開けっ広げにはなれなくて、あたしは慌てて笑ってごまかす。
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