325人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだ。ええと……翠川、修学旅行のグループのことでちょっと話があるから、来て」
チャイムと共に授業を終わらせた小杉先生が、愛美を指してそう言った。
そういえば、グループ分けのプリントの班長の欄には、適当に愛美の名前を書いてたっけ。
「え？ はーい」
返事をした愛美は教科書とノートを机の中にしまうと、あたしを見た。
「何だろ。円香～、ついて来てくれる？」
「いいよ」
その時、何となく青柳大輔を振り返った。
すると彼は退屈そうに頬杖をついて、ぼんやりと教室の天井を眺めている。
いつもいつも友達とバカ話をしているわけじゃないってこと、こうして最近知ったばかり。
何考えてるんだろう。
近付いて話しかけられるわけでもないのに、何だか教室を離れがたい気持ちになってしまった。
「円香」
「あ、うん。行こう」
愛美に急かされて、あたしは教室を出た。
．
最初のコメントを投稿しよう！