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青柳大輔のことを話してる。
あたしは改めてその女の子を見て、ギクリとした。
『……誘っといて逃げるとか意味判んないし』
冷めた青柳大輔の声が思い出される。
あの時青柳大輔と社会科準備室にいた子だ……。
ポニーテールの女の子は、教室に青柳大輔がいないことの愚痴を内藤くんにこぼし、やがてチャイムと共にいなくなった。
授業が始まっても、青柳大輔は戻って来なかった。
鞄は机にあるから、帰ったわけではないんだろうけど。
数学の記号の羅列をノートに写しながら、あたしはグルグルと考え込んでいた。
もしかして、さっきのあのポニーテールの女の子と途中で会って、またどこかで……?
思わず力が入って、シャーペンの芯が折れた。
乱れた線を消しゴムで消しながら、あたしはくちびるを噛み締める。
青柳大輔がどこで誰といようと、あたしには関係ないはずなのに、胸のあたりがジリジリと熱くて痛かった。
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