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お弁当タイムになって、やがてのんびりと青柳大輔が教室に戻って来た。
ここに誰もいなかったら、手元のお弁当箱のフタを彼に投げ付けてやるのに。
そうやって怒りに支配された瞬間、ガチッと舌を噛んだ。
「いたっ!」
いきなり声を上げたあたしの顔を、一緒にお昼を食べていた愛美と朝日奈くんがビックリして覗き込む。
「どしたの?」
「舌噛んじゃった。ああ、鉄の味がする~」
「茶飲んで冷やしな。冷やしたら血、すぐに止まるから」
「うん」
「舌はちょっと食べられないよぉ。時々ドジだよね、円香」
クスクス笑うふたりに苦笑しながら、痛みで冷静になった。
――何であたしが、青柳大輔に対してこんな突発的な怒りの感情を持たなくちゃなんないの。
あのポニーテールの子が青柳大輔の彼女なら、それはそれでいいじゃん。あたしには関係ないじゃない。
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