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「うん、小杉先生が修学旅行には来いって説得しに来てくれたあと、教科書は楽しくないから何となく地図帳開いて見てみたんだ。吉野、明日香、斑鳩(いかるが)、大和郡山(やまとこおりやま)とか、きれいな地名だなーって」
興味は持っても、今日は行けなさそうだけど、と真琴は肩をすくめる。
「吉野はあたしも聞いたことある。桜とか、紅葉とかきれいなんだっけ」
あたしが言うと、真琴は少し寂しそうに笑った。
「５月とか、どっちもシーズンオフにもほどがあるよね……」
結局奈良は大仏と鹿見学ツアーでしかないことに気がついて、あたし達は溜め息をついた。
「奈良公園付近にも、もっといいところや楽しい見方があるのかも知れないけどね。知らないからなんかもったいない」
真琴の呟きに無言で頷いて、あたし達は少し遠くにいる、身体の小さな鹿が青々と繁った草の匂いをしきりに嗅いでいる様子を眺める。
やがて鹿はスキップするように跳ねて、お母さんらしき大人の鹿のあとについて行った。
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