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「退屈そうだな」
笑いを含んだ声がして、あたし達は振り返った。
するとそこに、朝日奈くんが立っている。
「だってー、何か特別なことしようとしたらお金がかかるんだもん!」
朝日奈くんと仲のいい愛美が立ち上がって、彼のところに駆け寄った。
「あ、阿修羅像だろ。俺らも、入口まで行って帰って来た。パンフ見りゃよかったよ」
あたしは苦笑する朝日奈くんに、首を傾げる。
「で、戻って来たの? 朝日奈くんのグループも休憩?」
「ま、そんなとこ。ホラ、ウチのグループに青柳と内藤いるだろ。ジッとしてられなくて、あっち」
朝日奈くんが示したのは、だだっ広い草の絨毯。
あたし達が背を向けていたそこで、内藤くんが大きな牡鹿と睨めっこしていた。
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