1日目・奈良公園

12/15
前へ
/34ページ
次へ
   サド子の顔が引き攣った。  サド子のグループの子は、困った顔をしながらオドオドと状況を見守っている。  裕子とまやはこの空気に参加する気はないらしく、ドラマでも見るように瞳を爛々と輝かせていた。  フゥと溜め息をついて、真琴はサド子を見上げる。 「あの3人の中に目当ての人でもいるの? 気を引きたいなら、もうちょっとうまくやれば」  サド子のくちびるが、わなわなと震えた。  やがてその顔が、怒りに赤く染まる。 「何なのよ、あんたは!」  そのまま真琴につかみ掛かろうとするサド子の前に、咄嗟に立ち塞がった。 「赤城さん、どいて」 「待ってよ。冷静になりなよ」  サド子の怒りが、次はあたしに向けられる。  ――その瞬間。  パスンと音がして、サド子の身体がつんのめった。 .
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

400人が本棚に入れています
本棚に追加