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タクシーを降りて、大輔の後をついて歩いた。
「すぐそこだから」
言われるがままに従う自分に、ちょっと違和感。
そういえば、あたしって大輔のこと、ほとんど何も知らない。
……そうか。
知らないから、彼が何を考えてるのか判らないんだ。
それに気付いた瞬間、何だかとてもいたたまれない気持ちになった。
「……ね、ねえ、青柳……くん」
地図も見ないで歩く大輔の背に、思い切って声をかけた。
すると、大輔は不機嫌をあらわにして振り返る。
「あ? 何?」
「え、何で? 怒ってる?」
「……別に、怒ってねーよっ」
背を向けた彼を、立ち止まって見つめた。
構わずスタスタ歩いていた彼は、あたしがついて来る気配がなくなったことにすぐ気付き、立ち止まって振り返る。
その不機嫌に、気まずさが入り混じっていた。
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