夏祭りの夜

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   期末前の放課後は、部活動が停止になるから驚くほど静かになる。  あたしは「お誕生日おめでとう」を口々に言ってくれる愛美達とだべるのもほどほどに、校内を先生に注意されないように走り抜けた。  だって、帰ったらすることに追われる。  お風呂に入って、身体を冷まして、それからお母さんに浴衣を着せてもらうんだもん。  大輔と神社の前で待ち合わせをしたのは6時。  時間までにそこまでちゃんと終わらせられるのか、判んないもんね。  小学5年生の時からほとんど身長が伸びていないあたしは、その頃買ってもらったピンクの浴衣を着せられるんだと思っていた。  だから、帰って来た時和室に吊っていた浴衣にめちゃめちゃ驚いた。 「お母さん、どうしたの、これ」  走って帰って来たから、吹き出た汗が玉のように額に張り付いている。 .
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