夏祭りの夜

8/17
197人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
   考えてみたら、いつも声をかけてくれるのは大輔だってことを思い出した。  そりゃ慣れてないし、判んないわけだ。  くちびるを軽く噛んで、キュッと閉じる。  そして、深呼吸を一回してから、目を開けて一歩踏み出した。 「あの……っ、大輔……っ!」  意を決して口を開くと、たった今までそこにいたはずの大輔がいなくなっている。 「あ、あれ?」  キョロキョロと辺りを見回すと、さっき見た黒いTシャツがどこにもいない。  ウソ。  帰っちゃうほど、待たせてないのに。  慌てて石畳の方に足を向けると、目の前に腕が伸びて来た。  その手は鳥居につけられ、あたしは通せん坊されたかたちになる。 「なーに隠れてんだよ、バーカ」  見上げる視線の先には、はにかんだように微笑む大輔の顔があった。 「な、何で?」 「自分の女くらい、遠くからでも判るっつぅの。何慌ててたのか知らんけど、ちょっと面白かったから意地悪してやりたくなった」 .
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!