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そう言った真琴の笑顔が、ちょっと切ない。
「だけど、そんなことに気付いたって、その時点で失恋確定だったんだよね」
「なんで?」
「だって、お姉ちゃんと関係のあった男の子と付き合うなんて嫌だよ。たとえふたりの別れが円満なものでも、私がどれだけ大輔のこと好きでも、生理的にダメ」
それは、ひとりっこのあたしにはない発想だった。
けど、真琴がそう言うんだから、そういうものなのかも知れない。
「だから、大輔と付き合いたいとか、キスしたいとか抱きしめられたいとか、そんな気持ちは本当になかったんだ」
「……でも、好きだった?」
真琴は静かに頷いた。
「だけどある日突然、長いこと自分の部屋から出て来ない私をね、大輔が訪ねて来たんだ」
「うん」
「言っちゃうけど、ホントに毎朝。お前いいかげん学校来いよって。私、やたらそれが嬉しくて」
「うん、だろうね。それは判る」
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