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また涙腺が緩みそうになって、ナップサックを奥にしまいこもうとした時、足元に何かが落ちた。
「……あ!」
鈴虫寺の、黄色いお守り。
涼しい風と、鈴虫の羽音と、お線香の匂いと。
落ちたお守りを拾った瞬間、あの時身体で感じた全てのことが思い出されて、あたしはその場に崩れ落ちた。
大輔と、ずっと一緒にいられますように。
あの時、このお守りを手に、そう願ったはずなのに。
どうしてこんなところにしまい込んだまま、忘れていたんだろう。
涙があとからあとからあふれて来る。
忘れてしまっていたお守りと、そこに込めたはずの自分の気持ちに申し訳なくて、あたしはその場にうずくまって泣いた。
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