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「か、…ぇらっ…なきゃ。」
「帰らなきゃ?…!!まだ起き上がっては駄目よ!」
半分起こしただけなのに
身体中が痛い
いつも菊がどれだけ気遣ってくれていたのかが身に染みて分かる
冷や汗が頬を、顎を伝って顔から落ちた。
あれ?包帯だ
包帯が巻かれてる
少し薬の匂いもする
何でだ?
「お医者様も安静にしてろって仰ってらっしゃのよ、まだ動かない方が…」
あぁ医者に見せてくれたのか
ありがてぇ
いつかお礼に来るから
今は帰らなきゃ
「ぅぐっ…!」
きっと今俺はみっともねぇ顔をしてるんだろうな
汗だくで皺くしゃな
俺が維持で何とか立ち上がると、梅と名乗った女の人はこちらを見て固まっていた。驚いて言葉も出ないようだった。
「…はぁ。っせ、ぇわに…なっ、た。」
伝わったかな?
さっきのが通じたんだ。
きっと分かってくれる
取り敢えず
一刻も早くあそこに帰らなきゃ
見知らぬ家の壁を伝って重い身体を前に進める。
家を出る頃には最初よりは身体が言うことを聞くようになっていた。
後ろで女の人の声が誰かを探してる
俺にはきっと関係ない。
気付いたら俺は、痛みも忘れて駆け出していた。
駆け出すと言っても歩くのとさほど変わらないくらいの速さだけど
待ってろよ菊
兄ちゃん今帰るから
だからもう泣かないでくれ
…もってくれ俺の身体
菊が彼処に居るんだ
1人で
来た事も無いはずの土地なのに、俺の足は何かを目指して走り続けていた。
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