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その鬼の名前は――いや、鬼『のような』刑事の名前は鬼束要(おにつか かなめ)。
高城さんが新人時代、育成係として大変お世話になったそうだ。
確かにこの人の面倒見の良さや仕事に対する熱心さは、接してみて良く解る。
ただし、いかんせんその名に相応しく、かなり凄く怖い人なのが特徴だ。
物凄く失礼なのとやはり怖いのとで誰も口にはしないけれど、その顔つきや怒声はどこをどう見ても鬼そのもの。
たまに命知らずな人がいて、鬼束さんをそんな『鬼』ネタでからかうたびに殴られている。
僕はもちろんそんな事は絶対にしない。
絶対に。
この誓いはある出来事をきっかけに、ごくあっさりと破られる事になるのだが、それは別の話だ。
その日、まさに鬼の形相で鬼が――鬼束さんがデスクルームに現れた時は、情けなくも悲鳴を上げてしまった。
飛び上がりそうになったのは、何とか机のふちに捕まってまぬがれた。
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