∽前編なる前編∽

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鬼束さんの視線は高城さんに注がれていた。 けど高城さんが僕の背後にそそくさと隠れる事もしばしばなので、必然的にその視線が僕に向けられる恐れは多分にある。 部屋の暖房はそこそこ効いているというのに、ヒヤヒヤと背筋に冷たいものを感じながら2人を見守る僕。 鬼束さんは丸々数分にも感じられるくらい無言だったが、やがて口を開いた。 その表情から嵐のような怒号を覚悟したけれど、出てきたのは至極冷静な言葉だった。 嵐の前の静けさという言葉があるくらいだから、逆に怖いとも取れるけれど。 「……おい高城。お前最近、糖分摂り過ぎだ。このままじゃ脳がジャムみたくドロドロになるかも解らねえぞ」 ――確かに。 そんな話、聞いた事ないけれど。 「と言う訳で、今持ってる甘味は全て没収だ。全部出せコラ」 口調が『ヤ』から始まる3文字の職業の人のそれだ。 やはり恐怖しか煽らない。 .
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