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車を北東に走らせていた美久とクミ、こちらも家から車で約一時間程掛かる目的地へ向かっていた。
美久は太陽に人差し指を重ねた。
「最後の日じゃないみたいだね。小さい頃おばあちゃんと智美さんとドライブした時みたいな……」
「うん、あの時もこんな天気だった」
クミのビーチハットがひらひらと風でなびいていた、美久は後ろで猫のように丸まっている。
「最後の日じゃない、だから晴れてる」
クミが一瞬だけ振り向くと、美久は丸まったまま窓の外を眺めていた。
「チョコレンガ、食べるの楽しみだね、私あのココナッツパウダーが好きなの!」
美久はただドライブをしているかの様な、たわいも無い話を始めた。
「ココナッツじゃない、ココアだよ」
クミが微笑んで口を出す。
「えー!ココナッツ!」
嬉しそうに言い返す美久、
「違う、ココア」
クミが譲らずそう言うと、二人は笑った、全てを忘れ楽しそうに。
「絶対一緒に確かめに行こうね、ココアかココナッツか」
その後、二人は心で会話をした。
時間は止まらず1時間が経過。
美久、クミ、死亡まで残りあと4時間。
山の頂上を超えると北の海が広がっていた、海はキラキラと太陽の光を反射させた。
「あ、そこを右だね」
美久がひょいっと起き上がり前席に体を乗り出す。
背の高い木々は二人の陰となり涼しい風を吹かせた。
目的地に到着。
ロッジハウスと小さな池、人が近づけば一目で解るような、だだっ広い土地だった。
「たしかにここなら敵の侵入を防げそうだ」
「ここが私達を守ってくれる人がいる所か~」
二人の砦となる家の扉が開き、中から子供が一人出てきた。
「子供?」
駆け足で二人の前まで来ると口だけで笑い歯を見せた、小学三年生ぐらいの少年。
その少年は手招きをするとまた家まで戻って行った。
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